実家の片づけをしようと思う方は、ほんとうにやさしい方だなあと思います。
今は自分ひとりでも食べていくのがたいへんな時代。
美しくもありたいのでおしゃれや美容院、エステも必要。
出世のための仕事のスキルアップも必要だし、おまけに子育てなど大忙しのなか、親の家を片づけようと思う人は、本当にいい人です。
実は、親が大事に大事にとっておく物の中でも、親に快適に暮らしてほしいと願う、やさしい娘、息子ほど捨てられない物があります。
それは、娘、息子に関する小さいころの思い出です。
作文、日記、写真、通知表はもちろん、小さいころにかいた絵、習い事していたそろばんやサッカーのボール。
昔つくったプラモデルに、ランドセル、弾けないピアニカ。
娘さんや息子さんがすっかり忘れていた工作、賞状が、押入れに押し込まれていませんか。
子世代にとってはゴミみたいなものでも、親御さんにとっては、捨てられないものです。
なかには、実家を片付けたいと思っている、やさしい娘・息子ほど、といいたくなるようなガラクタも、必ず混ざっています。
子ども自身もいろいろ思いだされます。
しみじみ、見てしまう子どものほうが多いです。
あるいは、子世代にしては、忙しいなか、片づけにきたのですから、早く片付けたくても、
「こんなものとっておいて!」というのはNG.
もちろん、大切な物は、無理に捨てる必要はありません。
通知表や写真など、そもそもカンタンにすてられるものではないのです。
とっておくのなら、きちんと出せる場所に、箱などに入れてラベリングして思い出は思い出として、選んでとっておきます。
年間best10とか、そんなふうに選んでもいいでしょう。
思い出は取り出せてこそ、物として生きてきます。
見たいときにささっと出せるようにしておきましょう。
もちろん、親御さんと話をしながら片づけていきます。
超思い出と、2番目の思い出というように、格付けをしてくださいね。
かびがはえていたり、汚れていたり、捨ててもいいモノがあれば、あとで後悔しないために、儀式のように写真にとってから捨てるのもいいですね。
一番危険なのは、押入れなどに戻してしまうこと。それは、ひょっとするとそれはやさしさではなく、単なる子世代に面倒な気持ちかもしれませんから、注意してください。
押入れにつっこんだら、また何か月後かに片づけるときに、感慨にひたり、また見直して同じ位置にもどしておしまい、と、なりかねないのです。
高い飛行機代を払って帰省したのに、半年前とまったく片づけの進展なし、なんて人もいらっしゃいます。
思い出には、甘いものがありますが、危険な片づけの罠が隠れているのです。
くりかえしになりますが、格付けしながら、分けてしまうのがポイント。無理に捨てようとすると、かえって後悔が助長するだけです。
せっかくの機会ですから、仕分けをしながら、親御さんと会話をしながら片づけていく機会にできるといいですね。
(渡部亜矢)