実家の片づけでは、まったく引っ越しをしない人のほうが、片づけの難易度が上がることが多くなります。
捨てられない物がそのまま家に滞留するからです。

逆に、私が幼少期に親の転勤にともなったこともあるのですが、引っ越しの回数が多い人は、引っ越しのたびに物を整理するチャンスを実感していることと思います。

特に転勤を経験した人は、余計な物を溜めこむリスクもわかるし、ためる頻度が少なく、高齢になってからの、実家の片づけがラクというのを実感しているのは、プラスの要素ですね。

 でも、実は、例外があるのです。

それは、重要書類です。
同じ家にずっと住み続けた方のほうが、単純なことが多いのです。

……というのは、私たちの親世代は、転勤のたびに、その土地で、仕事のお付き合いで、保険や積立預金、証券の講座を、何口もつくっている人が多いからです。

いまはオンラインでつながっていたり、普通預金は各銀行で1口座だったりしていますが、ほんの少し時をさかのぼれば、まったく様子は違うのです。
バブル以前はもちろん、高度経済成長期なら、なおさらです。

違う銀行から取り立ての手続きを行うのは、時間も手数料もかかり、面倒だとそのまま持ち続けている人もいらっしゃいます。

そのうち、バブルがはじけ、保険会社や銀行が経営破たんして吸収合併されたり、合併が繰り返されたり…、結果、入っている保険の社名がわからなくなってしまった方や、レトロな名前の銀行の通帳が何冊も出てきたが、今はどうなっているのか、わからない…というケースがあるのです。

合併前の通帳のことをききたくて、保険会社や銀行に電話したらたらいまわしだった・・なんてことにもなりかねないのです。

実家の片づけは、家族の歴史をひもとくことです。
一方で、こんなふうに、企業の合併を直接受けていたり、日本の経済の歴史が表面化している部分もあるんです。
社会の出来事の、いろんなことと相関関係があるのです!

いずれにしても、古い重要書類を整理するのはたいへんなことです。
もし、あなたのご両親が転勤族でしたら、はやめにご両親に聞いてみるといいでしょう。
本人しかわからない話が、出てくるかもしれませんよ。

でも、いきなり、昔の通帳どうしてる?と聞くと、何言ってるの!といわれかねません。

子どもにお金の話をされたら、金額のあるなしにかかわらず、プライドの高い親は面白くないと感じるかもしれません。

お金の話は、通帳がたくさんあって困った人の話をするとか、住所変更や名義変更、相続の手続きに書類がたくさん必要で困ったなどという人の話などして、片づけながらさりげなくというアプローチが基本です。
転勤の思い出話をしながら、コミュニケーションがとれるといいですね。

片づきますように。

 

 

渡部 亜矢

片づける人を応援します